資格の「コミュニティ効果」
資格・検定を取得するメリットというと、資格をとらないと就けない仕事(弁護士・医師など)ができるようになる「法的効果」や、自分の能力・スキルを客観的に示すことができる「シグナリング効果」といった、目に見えて仕事や収入アップにつながりそうな効果ばかりが重視されがちです。
一方で、資格をとることによって有益なコミュニティやネットワークの構築につながるという「コミュニティ効果」のメリットもあることはあまり意識されていないかもしれません。
たとえば、いわゆる難関国家資格といわれる「士業」の資格には、「○○士会」というコミュニティが存在します。地域ごとに、弁護士会、税理士会、中小企業診断士協会といった、有資格者の組織が存在しています。
こうした士業資格は、高いネームバリューや法的効果があるのはもちろんのこと、同じ資格をもつ質の高い人材の集まるコミュニティに参画することができるというメリットもあるわけです。それによって有益な人脈構築や情報収集が可能になり、仕事や自己啓発の面で大きなメリットがあります。
また他の例としては、有資格者のみが加入することができるサロン的な集まりや、有資格者のみが参加可能なイベント・セミナー等に参加できるという資格・検定もあります。
資格取得後の定期的な知識のブラッシュアップや最新の業界動向の収集などに役立つ、自己研鑽の場やネットワークを構築することができるわけです。
さらにいうと、仕事やビジネスには直接関連しないような「趣味系」の資格・検定にも、コミュニティ効果は存在します。むしろこの趣味系資格のコミュニティこそ、私たちのこれからの人生の充実度を高めるための大きなきっかけとなる可能性を秘めています。
趣味系の資格・検定にチャレンジすることは、共通の趣味や価値観をもつ友人やコミュニティをつくる大きなチャンスです。たとえばお城巡りが好きな人なら「日本城郭検定」にチャレンジしてみたり、登山好きの人であれば「山の知識検定」を受験してみてはいかがでしょうか。
検定試験会場にはまさにその分野の愛好家が集結しているわけですし、「検定試験直前対策セミナー」や「合格者の集い」的な催しで、他の受験者・合格者と交流する機会が設けられている資格・検定もあります。
それによって、休日に趣味をともに楽しむ仲間ができるのはもちろんですが、「自分ではかなり○○について詳しいつもりでいたけど、まだまだ勉強すべきことはたくさんあるし、自分より詳しい人もたくさんいるな」という気付きを得ることにもなります。それがよりいっそう自分の趣味や得意分野を深掘りしていくきっかけとなったり、ともに切磋琢磨して成長し合う仲間づくりにつながったりします。
「人生100年時代」と言われるこれからの時代、私はこの「コミュニティ効果」の果たす役割というのがより高まってくるのではないかと考えています。
60代になって会社を定年退職すると急に人との接点がなくなってしまい、家に引きこもって誰とも会わずに日々を過ごすようになってしまう人も少なからずいらっしゃると聞きます。
長期的な人生の生きがいやネットワークを構築するきっかけとしても、資格・検定は大いに活用することができるわけです。